水道水へのフッ素添加に見られる意識の違い

欧米では水道水にフッ素を入れている国が多いため、日常的に虫歯予防ができていると考えられています。そういった世界標準でみれば、経済的に発展している国で水道水にフッ素を入れていないのはおそらく日本だけです。日本人は「水道水に薬を入れる」ということにどうしても抵抗感があるのかもしれませんが、もしこれが実現できるのならば日本の子どもの虫歯が激減するかもしれませんという専門家もいます。 日本人の歯科への意識が世界標準からみて遅れている、と言える事例はそれだけではありません。海外の人から見ると、日本人の銀歯の多さもそれにあたります。アメリカなどの先進国においては、白くてキレイな歯、というのはある種のステイタスになっています。そのため歯が黄ばんでいたり銀歯などの歯がチラチラ見えたりしていると「お金がないのかな」と思われてしまうのです。お金があるならまずは歯に使いたい、というのが欧米人の歯に対する意識としては普通なので、ブランンド品の高級バッグには高いお金をかけるのに自分の歯にはなるべくお金を使いたくない、という日本人は不可解です。いまだに銀歯を見せて笑っている日本人に、もしかして欧米人は大きな違和感を感じているのかもしれません。白くて綺麗な歯は健康美のシンボルです。話したり、笑ったりするときの口元の美しさは、顔全体の印象を決めると言っても過言ではありません。ところが日本人の多くが自前の歯が現時点で何本残っているのかということすら把握していないのです。

日米の歯科治療の違い

日本とアメリカの間の歯科医療における最大の違いは、やはり保険制度の問題です。日本は医療保険制度が整っているため、歯科治療も保険で受けることができます。誰でも、いつでも、どこでも、その時の所持金で気軽に支払える程度の医療費で治療が受けられる、というのは日本の歯科医療制度の素晴らしいところでしょう。ただし、保険では治療内容が限られてしまうことと、歯科医師の経験や技術の差がまったく反映されない、というデメリットがあります。一方、アメリカ社会は日本のような国民皆保険制度ではないため、治療費はかなり高額になりえます。よって経済的な問題から受診できない、という人も出てきてしまうのがアメリカの歯科医療の最大のデメリットと言えるでしょう。その代わりに最先端治療や専門ドクターなど、患者がすべてを選択できるというメリットもあります。痛くない治療を基本にしている歯科医院が多い点も、日本より進んだメリットと言えるかもしれません。このように欧米が最先端をゆく歯科治療ももちろんありますが、歯科材料や医療器具などに関しては、日本製品が圧倒的に優れていると言えるでしょう。

日本において多様化する歯科医療へのニーズ

歯科医療のニーズは日本全体の人口動態に大きく影響を受けます。日本が超高齢社会を迎えるにあたって、日本の歯科医療も従来のような歯科疾患だけでなく、口腔を取り巻く疾患の治療と予防、さらには介護への支援が社会や国民から求められてきています。特に高齢者に対する歯科治療は、口腔内や全身の健康状態などの個人差が大きく、歯科医療の提供場所や治療内容も多岐にわたることが予想されます。厚生労働省も、日本の歯科医療において、今後は居宅や介護施設等の訪問歯科診療のニーズが当面増えていくもの、という見通しを立てています。今後の歯科医療ニーズの話題といえば、高齢者ばかりに焦点が当たりがちですが、重要なのは子どもから高齢者まで各ライフステージごとに寄り添う歯科医療です。たとえば、小児に対しては予防歯科のさらなる充実や口腔機能の健全な成長・発育のための対策を、成人には歯周疾患の予防や虫歯の重症化予防に加えて機能回復のニーズが考えられます。このように日本でも歯科医療のニーズが多様化するなか、これらに対応できる歯科医師や歯科衛生士、歯科技工士といった歯科医療従事者が求められています。人々のニーズの変化を受けて、日本の歯科医療は変革を様られているとも言えるでしょう。さらに美しい口元を維持、再現するという新たな歯科治療に変化していくことが必要だと言えそうです。

わたしたちの健康寿命と歯の健康

2013年の 日本人の平均寿命は男性80.21歳、女性 86.61歳でした。初めて男性が80歳を超えるなど、日本人の平均寿命は伸びの一途を示しています。一方で、健康寿命についてはどうでしょうか。 健康寿命とは、日常的・継続的な医療・介護に依存しないで、自分の心身で生命維持し、自立した生活ができる生存期間のこと、とされていますが、2013年の日本人の健康寿命は、男性71.19歳、女 性74.21歳で、平均寿命との差は男性 9.02年、女性12.40年となっています。 日本歯科医師会では「歯科医療で健康寿命の延伸に寄与する」ために、8020 達成者が5割以上の社会「健康長寿社会」の創造を目指しています。 また、人口構造や医療ニーズの変化に伴って、日本でも歯科医療を取り巻く環境はめまぐるしく変わっていきます。かつて「むし歯の洪水」とまで呼ばれた時代の日本と比べると、現在の日本では乳歯のう蝕は著しく減少したと言えますが、その一方で、高齢者や有病者に対する歯科治療や歯周疾患の予防・対策などのニーズは益々増加しつづけています。虫歯や歯周病といった疾患への対応はもちろんのこと、口腔健康に対する支援といった「日常生活を支援する」視点が求められている、というのが、現在の日本の歯科医療ニーズの特徴と言えそうです。

8020運動

日本では国民の健康に対する意識として、口腔の健康に満足している人が身体全般の健康に満足している人に比べて下回っているという調査結果があります。 一方で、口腔の健康が全身の健康に大きく影響しているということが、各種研究により近年明らかにされています。 このように多くの人々のニーズの変化を受けて、歯科医療はこれまでの「単に歯が痛むからそれを治す」という対処療法的な治療から、「できるだけ元の歯を失わないように予防し、そしてさらに美しい口元を維持、再現する」、という根本的治療に変化していくことは確実です。 1989年に日本でもスタートした「8020(ハチ・マル・ニイ・マル)運動」の推進もあって、2006年には80歳における残存歯20本以上の割合が20%を超えました。一方で、高齢者の残存歯が増えるにつれて、歯を失う最たる原因は「虫歯」から「歯周病」へと変わりつつあります。高齢社会が進行していく中で、健康長寿の実現には口腔機能の改善が欠かせないというような意識改革の重要性が叫ばれています。この財源である国民医療費は、今後の社会保障費増加がみこまれる中ではその効率化が求められています。厚生労働省の調べによると、平成17年度の国民医療費のうち、疾患別医療費を比較すると、歯科疾患の医療費は、高血圧、糖尿病といった生活習慣病に対する医療費よりも高く、またガンに対する医療費とほぼ同額となってきているのです。